つまり、今聞いていた話は、葉上先生の過去だったってこと?
何かの童話だと思ってた。
葉上先生が医者になったのは、一つの恋がきっかけだったんだ。
「話を聞いて、どう思った?」
「バッドエンドにならずに、二人に幸せになってほしかったって思いました」
「そうか」
左腕の検査を終えた葉上先生が、左腕から手を離し、椅子の背もたれにもたれた。
ギィ、と椅子が軋む。
「まあ、結末はバッドエンドだったけど、少女……俺の好きな人も俺自身も幸せだったんだ」
好き“だった”人じゃなくて、
好きな人。
葉上先生は、今でもずっと、少女のことを想ってるんだ。
きっと、これからも。
なんて一途で、儚い恋なんだろう。
「後悔とか、しなかったんですか?」
「そりゃあ、数え切れないくらいしたさ。振り返ってみれば後悔ばっかりだ」
じゃあ、どうして。



