狭くて薄暗い視界には、スカートを握りしめている拳が二つ。 小さな手だなぁ。 これじゃあ、何も、掴めやしない。 この手の中は、空っぽ。 ため息を吐きかけたとき。 ガラッ!、とすぐ近くの扉が開かれた。 突然の音に、つい肩を上げてしまった。 「遅刻ギリギリだな、皆瀬」 「遅刻しなかっただけいいだろ」 「ははっ。そういう問題じゃねぇよ」 わたしのうしろを通りながら、今教室に来た人がクラスの男子と笑い合う。 先ほどまでの張り詰めた空気が、穏やかにゆるんでいく。 誰が来たのか、声だけでわかった。