わたしは、なかったことになんか、したくないよ。 ううん。 できないんだ。 とても、とても、大切すぎて。 終点の病院に着き、バスを降りる。 病院内に入り、受付に行こうとして、足を止めた。 「どうして、」 環くんがここにいるの? 環くんが診察室のある方向から歩いてきて、無意識に物陰に身を潜める。 なんとなく、隠れちゃった……。 見てはいけないものを見てしまった気分だ。 環くんはわたしに気づくことなく、病院を出て行った。 わたしは環くんのことを考えながら、受付をすませ、待合室で順番を待つ。