バスケットボールが、こちらのほうに飛んでくる。
このままじゃ、依世ちゃんに当たっちゃう。
不意に、ガラスが割れたあの日を想起した。
デジャヴだ。
大勢の野次馬に囲まれた、辛いシーンも脳内で再生され、生唾を飲み込む。
感傷も浸りながらも、あの日と同じように、手を伸ばす。
依世ちゃんが、迫り来るバスケットボールに気づいて、悲鳴を上げた。
「っ依世ちゃん!」
ドンッ!!
躊躇なく依世ちゃんの盾となったわたしの左肩に、バスケットボールが激しくぶつかった。
その勢いで体勢を崩され、前方に倒れそうになる。
や、やばい!
転びかけた、寸前。
誰かがわたしのお腹部分に腕を回し、斜めにかたむいたわたしの体を支えた。



