前に、依世ちゃんが言っていたっけ。
『それに、皆瀬くんって、なんていうか……誰にでも優しいけど、それだけっていうか』
『話しかけたら返してくれるけど、絶対にこっち側に踏み込んでこないし』
本当にそのとおりだ。
クラスの雰囲気に同化しつつ、誰とも深く関わらないように過ごしてる。
環くんとの会話は、「おはよう」と「またね」の挨拶だけ。
勇気を出して話しかけようとしても、なんとなく近づけずに断念してしまう。
その繰り返し。
険しい隔たりを、なかなか越えられない。
『泣かせたくないから、ダメ』
保健室で言われた、あの言葉の意味を聞きそびれたから、なおさら話しかけづらいのかもしれない。
環くんは、わたしを避けない。
その代わり、笑顔で拒む。
これ以上こっちに来るな、と。



