環くんは、朝と同じ表情をしていた。
泣かせたくないって言う環くんのほうが、泣きそうに見える。
わたしが、環くんにそんな表情をさせてるの?
「それってどういう意味?」
そう聞き返した、ちょうどそのとき。
「保健室の前で何やってるの、二人とも」
小さな袋を持った琴平先生が、購買から戻ってきた。
言い訳につっかえるわたしを横目に、環くんは保健室前から去っていった。
言葉の意味を聞きそこねてしまった。
どういう意味だったんだろう。
拳を握りしめようとして、冬木先生に頼まれた紙を一枚持っていたことを思い出した。
「あの、琴平先生」
「ん?」
「これ、渡すよう頼まれたので持ってきました」
「あー、ありがとう、矢崎さん」
琴平先生に紙を手渡す。



