窓際から離れた環くんが、わたしの横を通り過ぎる。
違和感が、膨れ上がる。
そのとき、この違和感が何か、わかった気がした。
いつもどおりだと思ってた。
けど、違ったんだ。
環くんは上辺だけ“いつもどおり”を演じながら、知らないうちに、わたしから離れていっていた。
友達の距離ですらない、クラスメイトとしての距離へ。
関係をリセットするみたいに。
環くんが遠ざかっていく。
やだ。
お願い、待って。
黙って壁を作らないで。
「待って、環くん!」
咄嗟に振り返り、必死になって環くんを引き止める。
環くんは、保健室を一歩出たところで、足を止めた。



