そういえば、午前の最後の授業から、教室に環くんの姿はなかった。
保健室は、環くんのお気に入りのサボり場所なのかもしれない。
紙を持つ手に力がこもり、くしゃ、としわを作ってしまう。
八年前のあの日を、思い出す。
環くんは泣いてないのに、
泣いてなんかいないのに、
助けて、と泣いているように見えた。
目をこすってみても、やっぱり切なそうで。
環くんを、助けたかった。
「環くん!」
環くんが、こちらを一瞥する。
何に苦しんでるの?
どうしたら助けられる?
どう聞いたら、環くんに近づける?
「だ、大丈夫?」
疑問の答えはどこにも見当たらなくて、曖昧な聞き方になってしまった。



