窓から差し込む西日の色が淡い蜜色へと変わっていった。
「そろそろ帰っていいか?」
私(峯崎友里奈 みねざきゆり)(明月蒼永 あけづきあおと)に失恋話を聞かせていた。
蒼永は来年度の受験にむけて難関校の過去問を解いていた。
友里奈が大声で八つ当たりしているのにも構わずスラスラと。
「ちょっと!聞いてんの!」
「ん。聞こえて入るけど聞き入れてない」
「もういいよ帰って!」
「はいはい」
実は私は今日失恋をした。
「好きです、付き合ってください!」
大好きな人(田城稔 たじろみのる)からの突然の告白。3月2日。この日は私にとっては特別になった。
この日は雨だったけれど晴だった。
この日はテストの点が悪かったけど良かった。
とにかく全て、何もかもが嬉しくてどうでも良くてたまらなかった。
「友ー里奈、一緒に帰ろ?」
教室のドアからこんなことを言われても恥ずかしくなかった。
「手、繋ごう?」
こういうことだってサラッという。手も絡ませてくる。でも時々不安に思うこともあった。それは
    ほんとに私が好きなのかということ
体育の時間も同じクラスの他の女の子と楽しそうにしゃべる。
女の子が倒れた時もお姫様抱っこで保健室まで連れて行く。
「一緒に帰ろう?」
私が言っても
「ごめん!今日用事あるんだ〜」
と言って帰ってしまう。
そして私はある日。
「別れよっか。」
とうとう怖がっていた一言を言われてしまったのだ。