「逆にいたの? 綾美の学校には」
綾美がお菓子と一緒に持ってきてくれたジュースを飲みながら訊くと、「秘密だよ?」と綾美は自分の唇に人差し指を当てた。
「絶対、秘密だよ?」
「わかったから」
私がコップをテーブルに戻すと、綾美は最後にもう一度唸り、やっと話し始めた。
「あの2人だよ」
「……あの2人?」
聞き返した私に、「だーかーらー」と言うと、綾美は「芹沢くんと大野くんー」と、なんでわからないんだよとでも言ってきそうな表情で加えた。
「ああ。……えっ、どうやって入らなかったの?」
つい訊いてしまったけど、そんな方法があったなんて、知りたいけど知りたくない。今さら部活に入らない方法を知ったって、もう中学時代は終わってしまっている。
「うーん。とりあえず入ってはいたみたいなんだけどお……」
「……いたみたいなんだけど?」
「全然 部活に顔出さなかったらしいの。友達が、2人がいる部活のマネージャーやってたんだけど、部活で見たことはほとんどないって言ってた」
「ああ、なるほどね」
出なければよかったのだと少し悪いことを思っていると、「なに納得してんのよ」と綾美に叱られた。
「なんかもう、2人が考えてることはやばいよ」
「賢いんだね」
「だから、なに納得してんのよ」
あたしなんか部活を楽しみに学校行ってたからね、と言う綾美に、本当?と返すと、綾美の中学校の思い出話が始まった。



