お邪魔してから約30分。テーブルの上には、綾美が用意してくれたお菓子が並んでいる。私なら袋ごと持ってきてしまうのを、綾美はわざわざ中身をかわいらしい皿に盛って持ってきてくれた。


「そうだ、愛は中学の頃って部活なにやってたの?」

綾美は目の前のポテトチップスをつまむと、思い出したように訊いてきた。

素直に「テニスだよ」と答えると、「意外なんですけど」と噴かれた。どういう意味だ。


「え、綾美は?」

「あたしは吹奏楽。友達がみんな入るって言うから」

「ああ……」

確かに私の学校も、女子は吹奏楽部が多かった気がする。中学校卒業と同時に離れた数少ない友達も、ほとんど吹奏楽部に所属していた。

しかし私は、吹奏楽部に対して肺を壊されるイメージしか抱いていなかったから、友達と別れてテニス部に所属した。そこでは、肺ではなく肌と体を壊された。肌はひたすら日焼けし、体は常にどこかしら筋肉痛だった。


「愛の学校ってさ、部活やってなかった子っていた?」

「えっ? いないよ、そんな人」

私が通った中学校では、部活に所属することは強制のようなもので、入らないという選択肢は誰も頭になかった。