着替えを済ませ、お母さんにおはようと行ってきますを告げようとリビングへ寄ると、お母さんが昼食として食べていたチョコバナナトーストに呼ばれてしまった。

さらにお母さんまで「一緒にどう?」と誘ってきて、なにも食べずに綾美の家へ行くという選択肢は完全になくなった。


遅めの朝食としてチョコバナナトーストを食べると、家を出るのは綾美から連絡がきた30分ほどあとの12時半過ぎになってしまった。

綾美に急かされることはなかったけど、怒っているのではないかと不安になった。


暑い夏の日差しを少しだけでも遮ってくれる庭の自転車置き場から自転車を出すと、すぐにまたがって学校を目指した。

もっと近い道もあるのかもしれないけど、綾美の家に行くのは今回が2度目。前回、入学してすぐに行った道しか知らない。


精一杯飛ばしたけど、綾美の家に着いたのは1時過ぎだった。自転車から降りて噴き出した汗を拭い、チャイムを鳴らす。

かわいらしいチャイムの音のあと、少し先にあるドアが勢いよく開き、髪の毛を片方で1つに縛った女性が走ってきた。


「愛っ。もう、遅いよお」

「あっ、綾美……?」

「超待ったし。まさか二度寝なんかしてないよね?」

「いや、まさか」

いつもと雰囲気が違う綾美は、お洒落な門を開け、私を「早く早く」と中へ入れた。