芹沢くんと別れて教室へ戻ると、「おかえりい」と綾美の声が出迎えてくれた。彼女自身は自席にいる。机に伏せた形で、顔だけがこちらを向いている。
「待ってたよ?」
「寝てたろうが」
席に座ろうとして言われた言葉に、笑いながら突っ込む。それに「寝てないもん。頭は」と返してくるのが綾美だ。
「つかさあ、もうちょいで夏休みじゃん? あたし暇なんだよねえ」
「ふうん?」
あえて知らないふりをするけど、綾美が言いたいことはすぐにわかった。暇だから家に来てほしい、か暇だから家に行きたい、のどちらかだ。
「だからまあ、夏休み中 愛の携帯には1日1回くらいの頻度でメールがいく」
お誘いメールがだろう。
「それはまあ、随分と頻繁で」
「返信がなければ、数時間に1回、さらに数十分に1回の頻度になる」
「嫌です。必ず一度で返信致します」
「よろしい」
じゃあ早朝から送るわ、と言う綾美にやめて下さいと返したところで昼休みが終わった。



