午前中は睡魔くんと闘い、昼休みは芹沢くんと話す、という日々を繰り返していると、春も終わりに近づいていた。

もう少しで制服も夏服に変わるという頃、私はいつも通り廊下を歩いていた。

芹沢くんと踊り場で会うことは少し前からなくなった。仲が悪くなったわけでも、全く話さなくなったわけでもない。むしろ、廊下で会ったりすればすれ違いざまに笑い合うほどの仲だ。


適当に自分たちの教室がある2階を歩いていると、前方から芹沢くんが歩いてきた。彼の姿を見つけ、喜ぶ自分がいる。

少し先の芹沢くんも、私と目が合うと笑ってくれた。

一度逸らした目も、すれ違う頃にはまた合う。そして、お互い笑みを浮かべる。最近、芹沢くんの笑顔がより優しくなった気がしている。

踊り場で話していたときも十分優しかったけど、最近は大野くんといるときに見られる笑顔に近い気がする。

気がするだけなのだろうかと思いかけて、それはないと悲しい考えを振り捨てた。

「いや、ないよ。ないない」

声に出して自分に言い聞かせ、芹沢くんの笑顔が見られた喜びに浸った。