「流行な。……なんか、かわいい理由じゃん」

「かわいい?」

芹沢くんに かわいいだなんて言われ、くすぐったくて聞き返しながら笑ってしまう。そんな私につられるように、隣で芹沢くんも笑った。

「そうだ。中学の頃、2人はどんなこと話してたの?」

「喧嘩にもなんねえような、くだらないこと」

そう言いながら、少し恥ずかしそうに笑う芹沢くん。つられて私も、また笑った。

「でも、友達なんてそんなもんだよね」

咲菜とも綾美とも、全然 大したことは話していない。

芹沢くんとも早くそんな仲になりたいな、なんて思っていると、「友達か」と芹沢くんは呟いた。芹沢くんの顔を見上げてみると、彼はなにかがわかったような顔をしていた。

「ん?」

「いや。ああいうのが友達って言うのか、と思って」

「そうだよ。だって、中1の頃からずっと一緒にいるんでしょ?」

芹沢くんの綺麗な顔に問い掛けると、彼は「まあ」と呟き 小さく笑った。

「えっ、なに?」

「いや、なんでも」

「気になるんだけど」

「いや、1つ賢くなったなあ、って」

「ふうん……」

いまいち意味のわからないまま頷いた私のその声を最後に、私たちの間には穏やかな沈黙が流れた。

しばらく2人でぼんやりしていて、睡魔くんが顔を出した頃、それを払うように昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。

ちょっとは距離も縮まったかな、なんて思いながら芹沢くんに別れを告げ、1階に下りてから教室へ戻った。