顔が熱くなるのを感じながら、何事もなかったかのように立ち上がり階段の上に立った。

「そんなとこにいないで来りゃよかったのに」

「ああ……ハハッ、そう?」


だめだ、この人は全然わかっていない。自分たちがどれだけハードルの高い人物かを。

あんな華やかな2人の間に入っていくなんて、空気の読めない私もさすがにできない。自分がどれだけ地味かがわかりそうで悲しいからだ。あんな2人の中に入れば、わかりたくなくても絶対にわかってしまう。


「……2人って、すごい仲いいんだね」

とりあえず、隠れていて見つかっていたという恥ずかしさを忘れるため、そんな話を振った。そしてその火種に火を点けるように、「いつから仲いいの?」と付け加え、ゆっくりと階段を下りた。

芹沢くんの隣で壁に寄りかかると、「中1かな」と返ってきた。

綾美に聞いていたことを思い出し、そうだよねと出かけた声を呑み込んだ。だけどこれが話を弾ませるチャンスだと思い、もう1つの質問を投げ掛けた。

「そんなに一緒にいて喧嘩したりしないの?」

「喧嘩。……喧嘩はないな」

「そうなんだあ。なんか、ちょっと羨ましい。私にも中学の頃から仲いい友達がいるんだけどさ、結構 喧嘩してたの。今は全然 仲よしだけどね」

「ふうん。……例えばどんなことで喧嘩すんの?」

「いやあ。本当、小さすぎて恥ずかしくなるんだけど、服の好み……とか、ファッションとか流行で」

咲菜はファッションや流行に詳しいのに対し、私はそういうものに全くついていけない。たまに2人で買い物に行ったりもしたけど、咲菜曰く私の選ぶものは全部 時代遅れらしい。

だけど私は私で、それが かわいいと思って言ったから変に言い返して――ということが何度かあった中学時代。幼かったんだ、お互いに。