想い舞う頃〜最初で最後の恋〜


退屈な入学式が終わると、初めての教室へきた。席は、廊下から4列目の前から2番目、教室の中心から一歩前に出たくらいの場所だった。

「なんかどえらい目立つ席なんですけど」と呟き、小さくため息をついてからその席に着いた。


教室内はすでにいくつかのグループができており、楽しそうな雰囲気に包まれている。彼らの放つその雰囲気から、同じ中学校だった生徒たちの集まりなのだろうと予想した。


咲菜と違うクラスになってしまい話し相手がいない私は、頬杖をついて窓の外を眺めた。

しばらく校門前の桜を眺めていると、中学校3年間同じクラスだったのに今回も同じなんてびっくりだね、といった感じの言葉が聞こえてきて、そうですね、と呟いた。

ねっとりとしたその口調は自分でも思うほど感じ悪かったけど、中学校で2年、3年と同じクラスだった咲菜とここにきて引き離されてしまったのだから致し方ない。

私にとって、咲菜はただの友達じゃない。毎時間 勉強を教えてくれる、勉強のナビのような存在でもあるのだ。

これで2年に上がれなかったらこの残酷なクラス分けをしやがった先生を恨もうと決めた。


「あっ、ねえねえ」

ふいに肩を叩かれ驚きながら振り返ると、右斜め後ろの席に、染めたような茶髪が特徴的な女子がいた。彼女は顔もかなり綺麗で、もしも同じ中学校だったら咲菜とツートップだっただろうなと思った。


「あのさ、名前なんていうの?」

「あっ、私?」

しかいないじゃんと鋭い突っ込みが返ってきて、そうだよねと笑い返した。

「笠原 愛、です」

「“あい”、か」

愛情の愛と書くのかと訊かれて頷くと、似合ってる、と斜め後ろの彼女は笑った。


「あたしは、クリハラ アヤミって言うの。甘栗の栗に、原っぱの原で栗原。アヤミは、綾織の綾に美しい」

テストとか結構めんどくさいの、と彼女は笑った。私よりは大変だよねと私も頷いた。

「じゃあ、栗原さん」

よろしくねと言おうとしたところで、彼女は噴き出し、豪快に笑った。

「やめてよ。栗原、しかも“さん”だなんて。綾美って呼んで? あたし、そっちのことカサハラさんだなんて呼ぶ気なかったんだから。よろしくね、愛」

「うん。よろしく、綾美」

嬉しそうに笑う綾美が伸ばしてきた手を握り返すと、前のドアが開けられた。