芹沢くんと話した場所から1年3組の教室までは、少し戻ればいいだけだから遠くはない。当たり前だけど、3組の教室の前まできても時計の針はほとんど変わらなかった。
とりあえず、怪しまれない程度にドアの窓から中を覗く。
雰囲気が落ち着きすぎていて、まじかと声が出そうになった。この部屋にいるのは、本当に私と同じ年齢の人なのだろうか。
確かに我々2組と同じように、いろいろな場所に生徒は固まっている。だけど全然わちゃわちゃした感じがなくて、居心地がよさそうとすら感じる。
なんだか、お洒落な洋服屋と子ども部屋くらいな違いがある。
私にこの教室に通うのはできないなと思っていると、中から2回ドアを叩かれた。
「あっ、すいません」と無意識に出た声と共にドアから離れる。
そっとドアが開けられると、その隙間からひょこっと親友の顔が出てきた。
「ヘロー」
親友は元気な声と共に手を振った。
「咲菜……」
彼女は、「なんで“Hello”でハローなんだろうね、まんま読んだらヘッローにでもなりそうなのに」と笑った。
「いやあ、どうしたの? こんなとこで。……あれっ、もしかしてウチに会いに来てくれたとか?」
咲菜は嬉しそうに言いながらドアを全開にする。
「いや、ちょっと芹沢くんに……」
「嬉しいなあ」
咲菜は私の言葉を遮り、話し始めた。
「もうね、このクラス最悪だよ? なんか、真面目しかいない感じ」
教室から出てくると、小馬鹿にしたように笑いながら肩をすくめた。
「愛は? どうよ、2組」
咲菜は腰に手を当ててにやりと口角を上げる。
「結構楽しいよ? ゆるーんって感じで」
いまいち伝わった気がせず苦笑すると、咲菜は「いいなあ」と小さく跳ねた。
「友達とかできた?」
「うん、1人は。咲菜は?」
「ウチはー、微妙。ウチはほら、愛みたいなおばかさんが好きじゃん? この教室、真面目ばっかだから」
咲菜はしれっとひどい言葉を混ぜ、後ろの教室内に親指を向けた。



