お弁当を食べ終えると、綾美はすぐに携帯へ険しい顔を向けた。どうやら本気で調べるらしい。
“私は英語がわかりません”と、“私は英語が話せません”を、英語でなんて言うか。
教室を出る前に行ってくるねと言ってみたけど、綾美から答えが返ってくることはなかった。予想はできていたから、驚きはしなかったけど。
明るい光が射す廊下は、ぽかぽかと穏やかな暖かさに包まれていた。昨日 芹沢くんと話したこの辺りには、やはり誰もいない。
この辺にいたら来るかなと思い、柱に寄りかかって足元を眺めた。手首の時計を確認すると、少し遅かった昨日を更新した時間だった。
手を腰の後ろへ持っていく途中、小さくため息が漏れた。
今日はもう無理だなと諦める自分と、まだ可能性はあると無駄に前向きな自分がいる。
昼休みの残りは、すでにたった20分。
綾美と話しすぎたな、と現実的な考えの自分が嘲笑う。それに、20分でカップ麺が何個できると思っているんだと反論する前向きな自分。確かに、5分のうどんでも4つ作れる。
その4つを多いと取るか、少ないと取るか――。
考える前に他のところ行ってみたらどうだ、らしくないじゃん、と前向きな自分に背中を押され、体はとりあえず教室の前に行ってみるという答えを出した。



