「友達、できるかな?」
歩き出して間もなく、咲菜の明るい声が言った。
「うーん。でも咲菜の場合、友達よりも先に彼氏ができるんじゃない?」
「ええ? そんなことないよ、絶対」
「そうなのかねえ?」
こういう話になると、咲菜は必ず最後の“絶対”を強調する。咲菜から返ってくる言葉はわかっていても、毎度 咲菜の場合は彼氏が先にできるのではないかと言ってしまう。
咲菜は中学の頃、男子の好きな人と言えば真っ先に名前が上がるほど人気があった。クラスや学年を越えて好きだという人がいると聞くこともあったほどだ。
確かに咲菜は、150センチという小柄な身長に華奢な体、えくぼが特徴的な笑顔、かわいらしい外見とはまるで違う、時々毒舌であったり大のダジャレ好きであったりというギャップなど、モテる要素はかなり持っていた。
クラスや学年の違う生徒からも好かれているというのは噂止まりだと思っていたけど、実際に告白されたこともあったらしく、どうしたらいいかと何度か相談を受けた。
だけど過去一度も恋愛経験のない私にそんなドラマチックな相談をされても、ちゃんとしたアドバイスをしてあげられるわけがなかった。素直にイエスとでもノーとでも言えばいいじゃないか などと言った記憶がある。
そんな恋愛とは無縁な私は、160センチちょっとと平均よりはある身長に平均的な体型、これといった特徴はない顔にめんどくさがりという言葉がぴったりな性格、という恋愛経験がないというのも納得な人間なのだ。容姿に特徴がなければ性格もがさつという有り様。
私と咲菜が違うのは勉強面もなんだよな、なんて思っていると、視界はたくさんの人で埋め尽くされた。
「うわあ、すっごい人……」
「やばい。超楽しくなってきたんですけどお」
咲菜はどこかおちょくるような声で言うと、助走をつけるように飛び跳ね、たくさんの人の中へ飛び込んでいった。
私も、ここにいても どうしようもないので咲菜に続いた。



