「そうだ、その人スタイルも抜群だよ?」
「まじ?」
「8.5頭身」
美咲ちゃんは、素敵と目を輝かせたあと、眉をひそめた。
「えっ、なんでそんなにいろんなこと知ってんの? 今日初めて話したんだよね? もしかして、初めて話した幼なじみとか?」
「えっ、なんでそんなにいろんな妄想広がってんの? 幼なじみなわけないでしょ。私が今まで1回も話さないでいられると思う?」
私が、仲よくなりたいと思った人にはぐいぐい行くタイプだということは美咲ちゃんもよく知っているはず。逆に、興味を示さない人にはとことん示さないということもよく知っているはずだ。
つまり、今になって話すくらいなら、もうとっくに話しているというわけだ。
「ああ……まあ。それもそうか」
「でしょ?」
「なんだ。つまんないの」
美咲ちゃんは本当に残念そうに言うと、後ろで手を組み、薄い茶色の床に落ちている綿ぼこりを蹴った。
「こういうときの面白さってなによ?」
苦笑する美咲ちゃんに、もうと返し、下に並ぶ大量の推理小説に視線を移した。一冊 一冊に、買いたくなる上手な言葉が並べられた帯が綺麗に巻かれている。
「今度の読書感想文は推理小説?」
右側から、美咲ちゃんの嬉しそうな笑顔が覗き込んできた。今にもあらすじを語りだしそうな雰囲気をまとっている。やばいと思った。
この雰囲気は、店員のモードが入ったときに放たれるものだ。このモードが入った美咲ちゃんに買わされた本の数といったらもう、笑うしかない。



