午後の授業と帰りのホームルームを乗り切ると、私は綾美と仲よく自転車置き場へきた。空は昼休みからあまり変わっておらず、決して晴れてはいない。
「どうすっかなあ。これからの数学」
「うん……。もうやめておいたら? あまり大事にするようなことじゃないでしょ」
事の発端は綾美が注意されたことだ。その復讐をするというのはどうなのだろうか。確かにシャーペンの芯を戻すのは大変ではあるけども。
「あーあ……」
綾美は自転車にまたがり、前のかごに掴まるようにして嫌な顔をした。
その隣で、私は1年3組の生徒が自転車を置く辺りを見た。そんなに時間を要することなく2人を見つけた。やはりあの2人は目立つ。こんなに人がいるような場所でも、すぐにわかる。
映画やドラマなんかでは、その場所だけが止まっていたり、スローモーションになっているような演出があるけど、まさにそんな感じだ。2人とも、『華』や『美』といった字が最高に似合う。
「……愛? 愛? なあに見てんの」
「わっ、はいっ」
「いや後輩かよ」
いきなり綾美が声を掛けてきて、変な声が出た。
「ごめん。なに?」
「いや、だからなに見てんの?」
「えっ、いやあ……」
慌てて2人の近くを探すと、運よく咲菜の姿を見つけた。
「友達っ。そう、友達。……咲菜っ」
お願いだから気づいてくれと祈りながら名前を呼べば、咲菜はすぐに振り返ってくれた。思い切り手を振れば、咲菜はやはり両手を振ってくれた。
「えっ、なになに、あの子? 友達」
隣から綾美が興味津々といった様子で訊いてくる。
「そうだよ、あの髪の長い子」と答えれば、綾美は満面の笑みで咲菜に手を振った。咲菜も最高の笑顔でそれに手を振り返す。
手を振り合う2人の様子を見ながら、私は咲菜があそこにいてくれてよかったと心底安心した。



