私は1日の楽しみが終わると、満足したし行く場所もないしで、普段より少し早めに教室へ戻った。ふて寝していた綾美は起きていて、目つきを悪くし、頬を膨らませて頬杖をついている。
大きく息を吐き出しながら机へ突っ伏すと、その綾美に鼻で笑われた。
「いいねえ、楽しそうで」
「えっ?」
「なんか愛、今日いつもより嬉しそうだよ? なんかあった?」
確かにだいぶ嬉しいことはあった。綾美に話したい気持ちもある。しかし、それを話していい空気になるとは思えない。
「なんにもないよ? ただ、廊下から虹が見えただけ」
一番無難そうな理由を見つけ、それをあげれば綾美はすんなり頷いてくれた。
「へええ、あたしも見たかったなあ。あ、写メ撮った?」
「撮らない撮らない」
希望に満ちた笑顔で訊いてくる綾美に、苦笑を浮かべた顔の前で手をひらひらと動かした。
「ちぇっ」
「綾美も虹とか好きなんだ?」
「やだ愛、あたしをなんだと思ってるの?」
これでも女の子ですう、とだいぶばかにした口調で言う綾美に、「ごめんごめん」と謝りながら、心で綾美が素直な人でよかったと安堵の息をつく。
今日のような天気では、きっと虹なんて見られないから。



