お弁当を食べ終え、綾美がふて寝したのを確認してから今日の散歩は始まった。もう嫌だを連発する綾美は、小さな子供のようで少しかわいく思えた。


手首の時計を見ると、いつも散歩を始める時間より少し遅い時間だった。散歩の時間に芹沢くんと会えるのが楽しみになっていた私には少し残念なものだった。

今日の窓の外は、雲は多いものの昨日のような雨空ではない。


昨日会った場所に近づき、無意識に歩くペースを落とした。

大きな窓が並ぶだけの、静かな廊下。階は私たちの教室もある2階だけど、その教室からは少し離れているせいか、休み時間や昼休みでも生徒がいることはほとんどなく、常に静かだ。

柱に寄りかかり、なんとなく制服の縫い目を指でなぞっていると、静かな足音が聞こえた。足音が聞こえた方には、会えることを願っていた人がいた。

「……芹沢くん」

「ああ、昨日の……」

こんにちは、と芹沢くんから言ってきた。慌てて同じように返す。

会えてよかったというのと、もう終わりかという気持ちが混ざった複雑な気持ちになった。しかし一度足を止めた芹沢くんがすぐに歩き出すことはなかった。