「ほんっとにまったくあいつ、本当にむかつく」

午前、全4時間の授業を乗り切り、昼休みに至る。教室には予想通り、綾美の怒りの声が響いた。そして今日も、教室内にある視線のほとんどを浴びた。今回も私がそれらに頭を下げ、綾美をなだめる。

「なんで掛かんないわけ? 足元注意、どんだけだよ」

「まあまあ、ね? じゃあ今度は上からいけばいいじゃない。足元への注意がすごいなら、頭上はあまり気にしてないかもしれないよ?」

綾美に落ち着いてもらおうと、奥から引っ張り出したアドバイスを差し出す。

「はあ。もういいわ、自信喪失」

「じゃあ、もしまた なんかやるってなったら、アイディアあげるよ」

「もういいし。今度から毎時間ガン飛ばすことにした」

綾美はしれっと とんでもないことを言うと、毎日入っている綺麗な玉子焼きを小さくかじった。

「ガン飛ばすって……」

あまり大事にしたくなかったからアイディアはあげると言ったのに、当然のことのように大事になっている。喧嘩を売ってどうする。

「もうあたしね、芹沢くんを見習うことにした」

突然出てきた芹沢くんの名前に、自分の中のなにかが反応を示した。

「芹沢くん……?」

「言ったでしょ? 中学の頃、先生のこと舐めてたって」

「うん……」

正直、綾美のその話もいまいち信じられなくなってきている。綾美に言ったらなんと言われるかわからないけど、芹沢くんはきっとそんな人じゃないと私は信じている。