待ってもいない新たな1日と数学の時間がやってきた。綾美はなにを思いつき、なにを実行するつもりなのだろうか。
今朝 自転車置き場で会った綾美は、この時間が半端じゃなく楽しみそうだった。
先生は綾美のいたずらを受けに行くかのように、綾美の席へ近づいていく。どうか いたずらの範疇を超えていないようにと願う。
「……栗原」
ちょうど、綾美の席の近くで先生の足音が消え、先生の鋭い声が綾美の名前を呼んだ。その直後、床と上履きが擦れるような音がした。
「……あ?」
「あじゃない。足を出すな。授業は真面目に受けろ」
先生の言葉で、綾美がやろうとしたいたずらがなんとなくわかった。私の予想が正しければ、綾美がやろうとしたいたずらは足掛けだ。
しかし先生の足元への注意がすごいのか、綾美のやり方があからさまだったのかは わからないけど、私にはどうもしてあげられないほどの失敗に終わっている。
「高校生ってこんなだったかな」とわざとらしく呟くと、先生は通路を引き返して教壇の上へ戻った。静かな教室にかたかたという音が響く。
それが綾美の貧乏ゆすりによって出ている音だということはすぐにわかり、直後にお弁当の時間はずっと愚痴を聞くことになるな、と悟った。



