昼休み終了の約5分前。戻ってきた1年2組の教室。中はまだ賑やかだった。
「綾美っ、綾美」
賑やかな教室に負けないくらいの声で、自分の席から険しい顔でノートを眺める綾美を呼んだ。
「ねえ綾美っ、すごいの」
「……なにが?」
騒がしい私の声に、綾美はノートから目を逸らさないままで答えた。
「さっきね?……あっ」
さっきのことを話してはいけないと気づき、口を閉じる。昨日、同じようなことを話して不穏な空気になったことを思い出した。なんとか別の話題を探す。
「あっ、なんか面白い方法思いついた?」
綾美が昼寝の時間を使ってまで考えた復讐の方法について訊いてみた。これが一番盛り上がると思ったからだ。
「いやね、全然思いつかないわけよ。ちいちゃいいたずらは何個か思いついたんだけど……」
綾美は困ったようにノートを見つめる。このノートに、“ちいちゃいいたずら”の内容が書かれているのだろう。
周りに見られないようにするためか、かなり小さい字で書かれているのでなにが書かれているのかはここからでもわからない。
「まあ、とりあえず明日。1個実行するわ」
ぱたんとノートを閉じ、綾美はにやりと笑った。不気味な笑みに背筋が凍る。彼女はどんないたずらを思いついたのだろうか。



