「あーもう。あの男、絶対許さない」
「綾美。もうちょっと……ボリュームダウンで」
シーッ、と人差し指を自分の唇に当てると、綾美はため息をついてご飯を頬張った。
午前の授業を死ぬ気で乗り切り、やっと迎えた昼休み。私が耐え難い空腹と闘っている間、綾美は午前中ずっと2時間目のことを引きずっていたらしく、その怒りを今ぶちまけたという感じだ。
「んっとに。鈴木のやつ、復讐してやる……」
前でがたがたと貧乏揺すりをする綾美が、普段以上に低い声で言う。教室にあるいくつかの視線が向けられ、私が代わりにそれらに謝った。
「……でも、先生喜ぶんじゃない? いつも復習復習、って言ってるし」
ありきたりな言葉しか見つからなかったけど、苦笑を返すよりいいと思い、思いついた言葉を差し出した。
「ほんっとだよね。絶対するわ、復讐」
「ハハッ、頑張れっ」
せっかく言葉を返したのに、最後は結局 苦笑を返し、とても綺麗とは言えない並び方をするおかずの1つを頬張った。
なんとかという字を1文字変えて――漢字バージョンか。



