教室に着いたのは、朝のホームルームが始まる直前だった。担任の小嶋は、遅刻だとも遅いとも言わなかったけど、どこかわざとらしい睨みをしてきた。
今は2時間目の授業の最中、ノートは落書きのようなものの跡が残るページの続き。
今日もこのノートを自由帳化しようかとも思ったが、先生のほうが今度は怒るだろう。それに、芹沢くんたちに関してそんなに考えることもない。
仕方なく私は、いつものように ぼんやりと窓の外を眺めた。雨は、止んだか霧雨かくらいになっていた。
「……栗原」
「うわっ」
先生の低い声が綾美の名を呼び、斜め後ろからパラパラと気になる音がした。
「ちょ、ああもう最ー悪」
綾美の絶望したような声に、こっそり彼女の席を見てみると、ノートの上にシャーペンの芯が数本 散らばっていた。確かにこれは嫌だねと心の中で共感する。
こっそりと綾美を応援していると、先生の声が今度は私の名前を呼んだ。
「えっ?」
前を向けば、必死感満載な笑顔を浮かべる先生と目が合った。少しは真面目に授業を聞けと言っているような先生の目に軽く頭を下げ、シャーペンを握り直した。



