想い舞う頃〜最初で最後の恋〜


外は、部屋の窓から見た通りよく晴れていた。春らしい暖かな空気が流れている。今日は1日中この穏やかな気候が続くらしい。

お母さんと並んで歩く、校門までの約100メートル。両端に街路樹のように等間隔で並ぶ桜の木を眺めながら、薄紅色のトンネルをのんびりと進む。

残り数メートルという辺りまできたところで、ふわりと風が吹き、たくさんの小さな花びらが舞った。

無意識に右手を伸ばし、そっと握る。何度か繰り返しても掴めるものはなかった。諦めて右手をおろす。


桜を見上げながら歩いていると、薄紅色だった空が澄んだ水色に変わった。

校門をくぐったのだと気づいて前を向くと、中学校の頃から仲のいい友達、藤井 咲菜(ふじい さな)の姿を見つけた。

彼女もこちらに気がついたらしく、大きく両手を振ってくれた。チャームポイントである少し茶色い長い髪の毛は、今日もさらさらな状態でおろされている。前髪は作ったり伸ばしたりを繰り返しているけど、今はしっかり前髪と呼べる前髪がある。


「あーいーっ」

少し離れたところにいる咲菜は、私の名前を呼ぶとぴょんぴょんと飛び跳ねた。隣で彼女のお母さんが恥ずかしそうに肩をすくめる。


「愛、行けば?」

私はお母さんの言葉に大きく頷き、両手を振りながら飛び続ける咲菜の元へ走った。