勉強がわからないとか1週間が長いとか。いろいろと くだらないことを話しながら自転車置き場にきた。
「はあ、疲れた。まだ月曜日だよ?」
自転車のかごに鞄を放り込むと、綾美は再び愚痴とため息を漏らした。私も全く同じことを思っている人間なので、毎回初めてのように頷く。
今回も「そうだね」と返した。
綾美と同じようにため息をついて鞄を自転車のかごに入れると、なんとなく右側の少し先――咲菜と同じ、1年3組の生徒が自転車を置く辺りを見た。
するとそこに、芹沢くんと大野くんの姿を見つけた。笑ったらきっと素敵――。コンビニで事件が起こった土曜日に、勝手にした予想を思い出した。
少し先にいる芹沢くんは、まさにその素敵な笑みを浮かべているように見えた。
普段少しきつい目は、私が見たいくつかの芹沢くんの中で一番優しくて、形のいい唇は大野くんに なにかを伝えている。口角も少し上がっているように見える。
ただの、友達と話す男子生徒の姿なのにすごく貴重なものを見ている気分になるのはなぜだろう。
「愛?……愛? ちょっ、おい」
「わっ、なに?」
無意識に芹沢くんの笑顔を見つめていて、綾美の声すら聞こえなくなっていた。
慌てて謝ると、綾美は「明日ちゃんと会えることを願うよ」とばかにした笑みを浮かべた。そこそこむかつかせてくれる綾美の笑顔に、私の声はうるさいと叫んだ。



