「よし、以上。……起立」

帰りのホームルーム。やたらキレのいい担任の起立を合図に、生徒たちが だらだらと立ち上がる。担任がそれを確認すると、次は礼の号令が掛かった。これもまた無駄にキレがいい。

意外と声が出る人なのだなと失礼なことを思っているうちに、周りの生徒たちは鞄を手にぞろぞろと教室を出ていった。

私も帰ろうと、あくびをしながら鞄の紐を掴み、通路の方を向いた。そしてやっとそこにいた綾美に気づく。やはり、笑っていない綾美の顔は怖い。

「ちょっ、いつからいたの?」 

驚きも隠さないままに尋ねれば、綾美は豪快に笑った。見た目や女の子らしさを気にしないこの豪快な笑い方は好きだ。

これも、決して多くない友達の1人、咲菜に似ているからなのだろうか。

「いや、まさかあんなに気づかないとは……ハハハッ」

「はいはい、帰りますよ?」

未だ笑い続ける綾美の肩を叩き、2人で教室を出た。