家に帰り、シャワーを浴びて自分の部屋にきた。パジャマでベッドにうつ伏せで寝ると、携帯の画面に1枚の写真を浮かべた。高校の卒業式での1枚だ。瞬と撮った最初で最後の写真でもある。
光で作られた自分たちを眺めていると、その光が滲んできた。それからほとんど時間を要することなく頬を温かいものが伝った。涙が頬を濡らす度に声が漏れる。
この中には、瞬がいる。隣にはなにも知らずに笑っている自分もいる。今この世界には、画面の中で笑う瞬に会えないことを理解しつつある、寂しさを抱いた自分だけがいる。
この携帯が彼の携帯を呼び出しても、瞬の声が聞こえてくることはない。メールが返ってくることもない。
わかってはいるけど悲しくて、わかっているから寂しい。



