それからしばらく話し込み、帰る頃には6時を少し過ぎていた。『気をつけろよ』と瞬に見送られ、彼の部屋を出た。「帰るの?」と部屋の外にいた瞬のお母さんが言う。
「はい。本当、いつもすみません、遅くまで」
私が頭を下げると、瞬のお母さんは「全然」と笑顔で首を振った。
「ただ、暗いからそれだけ気をつけてね。変な事故とか事件に巻き込まれたら、私も悲しいから」
「はい。瞬にも言われました」
私が笑うと、「いろいろと私の方に似たのね……」と瞬のお母さんは少し悲しそうに呟いた。
掛ける言葉が見つからずにいると、「気をつけて帰ってね」と瞬のお母さんはどことなく瞬に似た綺麗な笑顔で言った。
「はい。ありがとうございます、お邪魔しました」
お辞儀して玄関へ向かうと、「また明日ね」と優しい声が追ってきた。手を振る瞬のお母さんに、ありがとうございますともう一度頭を下げた。



