しかし『運』だとか『神様』だとかいうものはイタズラ好きで、私に逃げ場を与えなかった。気がつけば、モデルのようなシルエット――芹沢くんとの距離は、もうすれ違うしかないほどに縮んでいた。
もしかしたらと小さな希望を抱きもう一度顔を確認するけど、短い距離の先にいる男子生徒は芹沢くんでしかない。
心の中でため息をつくと、芹沢くんと目が合ってしまった。その視線を逸らす方法も見つからず、すれ違いざまに 土曜日はすみませんでしたという意味を込めて軽く頭を下げた。
すると、芹沢くんの整った小さな顔も同じように下げられた。土曜日のように迷惑そうな目を向けられると思っていた私は、逆方向へ進む芹沢くんを目で追うように振り返った。
そして覚えている限りの芹沢くんの特徴と、今すれ違った彼の特徴を照らし合わせる。決して多くはないけど、覚えている全ての情報と照らし合わせて出た答えは芹沢くん本人だった。
本当に身長はあるくせに頭は小さいな、と思いながら後ろ姿を見送る。そして、次第に嬉しさに似たなにかが込み上げてきた。



