白いニットにカーキ色の上着、下はジーンズという無難な格好に、ポニーテールには白のリボンを結んだ。

財布と携帯だけを入れたバッグをかごに突っ込むと、雑にスタンドを上げ、飛び乗るように自転車にまたがった。重たいペダルを踏み込む度に痛いほどに冷たい冬の風を浴びながら、喫茶Cherry Blossomを目指した。


喫茶店に着いたのは咲菜とほぼ同時だった。流行最先端の出で立ちの咲菜を見たときは、つい見ている世界の違いを感じてしまった。


店に入ると、私は“めろんとばにら”という飲みものと“ちいさなちょこれーとぱふぇ”を、咲菜は“いちごみるく”という飲みものと、名前に光るものを感じたということで“チョコっといちごのすぺしゃるぱふぇ”を頼んだ。


「いやあ、久しぶりだね」

「そうだねえ。今なにしてるの?」

「ウチは……普通の事務員。もうね、電話鳴りっぱなしよ」

「そっか。大変だね」

今日は休みなのかと尋ねると、咲菜は昨日風邪のような症状で仕事を休み、治ったけど今日も休んだのだと言った。だから今日はさぼりなのだと続けるように笑った。

「で、愛はなにしてるの?」

「私は、友達の紹介で近くの本屋さんに。意外と体力使う仕事でさ」

最初びっくりした、と笑うと、咲菜は「本っていっぱいあると重そうだもんね」と頷いた。

「あっ、そういえばさ、今度小説が原作の映画やるでしょ。泣けるミステリーらしいよ」

「ああ……。木下 シズクでしょ?」

「そうそう。あの人なら間違いないよね。で、キャストもすごくない?」

誰だっけ、と咲菜がバッグを漁っているうちに、咲菜の注文したものが運ばれてきた。

「どうもー」と店員さんに会釈し、その人の姿が見えなくなった頃、咲菜は“チョコっといちごのすぺしゃるぱふぇ”を眺め、「でかくね?」と呟いた。