その週の日曜日、俺は仕事が休みである父親をリビングに呼んだ。母親は俺の病気がわかって仕事を辞めてから、奏や愛がいないときはいつもリビングにいる。

リビングに俺を含めた家族3人が揃い、俺がなにを話すか予想できている両親は緊張に似たなにかをまといながら黙っている。


「俺……このままでいいと思ったんだけど」

これからに対する自分なりの考えで沈黙を破ると、母親は悲しそうな笑顔で頷いた。「そう言うと思った」と囁くように呟く。父親は黙ったまま、眉間に皺を寄せた。

「いいんじゃない、瞬の人生だし」

ねえ、と母が共感を求めると、父は一度目を閉じ、長く息を吐いた。

「これから先、なにが起こるかわからないぞ」

父の低い声に、俺は苦笑した。

「親父はそう言うと思ったよ。これから治療法が見つかるかもしれないってことだろ? でも俺、最期まで自分として生きたいんだ」

父の表情が一層険しくなり、俺は違う違うと笑った。

「なんて言うのかな。自分の体でっていうか……」

言葉が見つからない俺に、母は「お父さんと一緒だ?」と言った。

「まあ……そうなるのかな。あんなかっこいいものじゃない気もするけど」

俺が苦笑すると、母は笑顔で頷き、「理由はなんでもいいんだけどね」と言った。

「瞬が後悔さえしないでくれたら」

父は笑って頷いてくれた母とは違い、「俺はお前の気が変わることを願う」と残して自分の部屋へ戻った。

俺は父の部屋のドアが閉まる音を聞きながら、2人にはいつ話そうかと考えた。