本格的にこれからのことを考えなくてはならなくなったのは、2月上旬のことだった。十分に眠った気がしないなどと感じていた中、医師に呼吸器のことを考えたほうがいいと言われた。

俺が生まれるおよそ2年前、母親が30歳のときに同じ病気でこの世を去った祖父は、最期まで自分の力で生きたいという意志から、呼吸器を着けなかったらしい。

そのせいか、母親は俺に、生きたいように生きればいいと言った。そして1つの願いとして、着けるにしても着けないにしても、決して後悔しない方を選んでくれとも言った。


祖父が呼吸器を着けなかった理由を聞いたとき、俺は自分がその人に似ていると思った。医師に呼吸器のことを考えたほうがいいと言われたとき、不思議とこのまま生きていく自分を想像した。

よく考えてみれば、最期まで自分の力で生きたいという思いもあるのかもしれない。ただもう1つ、漠然とこのまま生きていく自分を想像しただけで、実際のところ、生きる勇気も違う方を行く勇気も、今の自分にはないような気もしている。