今から約6年前。当時の俺は、勉強が友達だった。特技は勉強、趣味は予習。そんな俺に、唯一どうにかできないかと考える勉強以外のことがあった。今も当時も興味のない噂のことだ。
誰かが誰かを好きだとか、なんとか部のなんとか先輩がかっこいいだとか、そんなくだらない噂の中に、他のクラスでいじめが起こっているという噂があった。
噂の真偽を知る術もなく、事実かもしれないいじめに対してなにもできない日々が続く中、いじめの被害者がオオノという金持ちであるという噂を聞いた。しかし被害者の名字と金持ちであるという情報を聞いてもなにもできなかった。
それらの情報は噂の真偽を明白にするものではなかったからだ。噂好きの女子にでも話を聞けばよかったのかもしれないが、当時の俺は他人と関わることどころか他人と会話をすることすら面倒に思う人間だった。そんな当時の俺にとって、噂好きな女子なんて世界で最も面倒な生き物だ。そんな生き物と接触するくらいなら自然と入ってくる情報を頼りにする方が楽だと思った。
密かに噂に聞き耳を立てる日々が続いたある日の下校中、そばを通りかかった公園で見つけた。学ラン姿で1人、ブランコに座る男を。



