俺がリビングに戻ると、奏はさっさと窓を閉め、同時に鍵をも閉めた。

手元の写真を眺めていると、奏には申し訳ないが彼にもう1つ頼みたいことができた。

「なあ、奏」

ソファに座りかけた奏を呼ぶと、彼は「ちょっと白湯飲ませて」とテーブルの上のカップを取った。白湯を飲んで冷めてる気がすると呟くと、「なに?」と俺の頼みに耳を傾けた。

「今から近くのショッピングモールに行ってきてくれと言ったら、どうする?」

だめ元で言ってみると、奏はカップをテーブルに戻し、カップを持っていた右手で目元を覆った。さらに深くため息をつく。

「……だめ? いや、明日でもいいんだけど、お前暇か?」

「明日どころか、明後日も来週もいつだって。予定空けようと思えば空くんだけど」

奏はそこまで言うと、体を起こしてソファの背もたれにもたれた。

「瞬くんのお願いでしょ? いいよ、行ってくるから」

声も表情も全くいいと思っていないようだが、奏は言葉で引き受けてくれた。

「で、なにを買ってこいと?」

俺は「金は返すから」と言ってからほしいものを言った。