できないことが増えていく中、ふと見たカレンダーは12月上旬。朝からやたら寒い今日は、昼頃から奏が家に来ている。
俺は10分ほど前から、リビングから出たウッドデッキで、日没の迫る空を見上げていた。
一番最初に見つけた、一番光っていると思った星を一番星と呼ぶ――。少し前、高2の夏に愛が言った言葉を思い出した。その日を境に、俺は目標とする星を探している。今日もそうだ。
「……あっ」
外に出たときより少し暗くなった空に、どこか惹かれる星を見つけた。俺はいつの間にか扱いに慣れた車椅子をまわし、リビングへ戻った。ソファで、もはや好物とも言える白湯を飲む奏が「よくこのくそ寒い中外にいられるね」と言う。
「ちょっと、奏にもその“くそ寒い”外に出てもらいたいんだけど」
「はあっ? いやいや、なんの修行?」
「いいから。写真撮ってもらいたいだけだから」
「えっ……なんの?」
奏は疑問符を浮かべ、カップをゆっくりとテーブルに戻した。
「空。……ていうか、星」
写真ど素人の僕に空撮れとかハードル高くないかなどと言う奏にインスタントカメラを持たせ、再びウッドデッキに出た。動かせなくなりつつある右手でなんとか撮ってほしい星を伝えると、奏は真面目にカメラを構えた。数秒後にシャッターが切られる。
出てきた写真に色が出ると、奏はこれでいいかと俺に写真を見せた。紺色の空を背景に、右斜め上辺りに星が映っている。
「うん、全然いい」
礼を言って写真を受け取ると、奏は「お役に立てて光栄です」と笑い、「ああ寒い」と唸るように言いながらリビングへ戻った。
「寒いから早くっ」とリビングの中から俺を急かす。