リビングへくると、我が家に似た雰囲気にほっとした。「適当に座って」と言われ、私は前回と同じ場所に座った。


「なんで急に連絡くれたの?」

私は短い沈黙を破った。瞬は「いや……」と恥ずかしそうに笑う。その笑顔がかわいく、「なによ」と続きを促しながら私も笑った。

「あのあと奏が来て。“ばっかじゃねえの?”って、長々と説教受けた」

「ふうん。じゃああれだ? 奏に怒られなかったら連絡くれなかったわけだ?」

私がわかりやすくふてくされると、瞬は「だって……」と子供のような言葉を真面目な声で言った。私は瞬に帰れと言われたあの日の記憶に突き動かされ、「別にいいじゃん」と言った。

「私、変わんないよ? 瞬を大好きな気持ち。だって、今も今までも、これからだってずっと、瞬は瞬だもん。私、瞬のなにかをできるところが好きなんじゃないよ。ばかで優柔不断で、がさつで自己中な私のそばにいてくれる瞬が好きなんだよ。それは、ずっと変わらない。いつだって、そのときの瞬が大好き」

私が自分の想いを伝えられそうな言葉を思いつく限り並べると、瞬は笑った。

「なに、ばか語は理解できないとか言わないでよね」

「違う違う。なんか、奏みたいなこと言うなと思って」

「えっ。じゃあ私、ばかじゃないのかな?」

私がふざけてみると、瞬は「だと思うよ」と言ってくれた。

そして続けるように、「だから帰らせたんだよ」と呟いた。意味はわからなかったけど、真意は訊かなかった。その呟きが、彼の心の声にも聞こえたからだ。