小雨の中家に帰り、自分の部屋へ直行した私は、勉強机の下にある収納を引き出した。ほとんどなにも入っていないそこには、指輪の入った小さな木箱を大切そうに抱えた熊のぬいぐるみがある。

木箱に入っている指輪は、昨日外した、瞬とお揃いのものだ。高3の頃からは学校へも身につけて行くようになった。外したのは約1年ぶりだ。

私はぬいぐるみのそばに入れたシルバークロスと共に指輪を手に取り、丁寧に磨いた。しばらく磨けば、明かりの点いていない薄暗い部屋でも光っているのが確認できるようになった。

私は少しの間それを眺め、ぬいぐるみが抱く小さな木箱に戻した。引き出しを閉めると、悲しみのような感情が胸の辺りをざわつかせた。