その後沈黙の中を歩き、やがて目的地である瞬くんの家に着いた。僕がチャイムを鳴らすと、しばらくして中から鍵が開く音が聞こえた。「はい」と瞬くんの声が続く。

ドアを引き、理解に要した数秒のあと、僕は後悔に似た気持ちを抱いた。僕よりも低い位置にある瞬くんの顔が複雑な色に染まる。

「久しぶり」と言った愛ちゃんの声を遮るように、瞬くんは「ごめん」と呟いた。

「もうしてやれることはない。帰れ」

今にも消えてしまいそうな声で並べられた言葉を聞き返した愛ちゃんの声は、微かに震えているような気がした。

「いいから。帰れ、もう来んな」

「ちょっと瞬くん……」

一度瞬くんを落ち着かせようと僕が声を発した直後、愛ちゃんはきた道を引き返した。引き留めようと何度か彼女を呼んだ僕の声も意味を成さなさった。諦めて瞬くんの方を向き直る。

「瞬くん、別に……」

「悪い、今日はお前も帰れ」

僕は自分の言葉を遮った瞬くんの微かな声に頷き、「またくる」と残して芹沢家の敷地を出た。