「本屋さんって? 忙しい時期みたいなのは決まってるの?」
「うん……。漫画とか雑誌の発売日とか、小説の“賞”が発表されたときかな。あと、私はまだ知らないけど年末も忙しいらしい」
「そっか。大変だね」
「意外と体力的な方がね。果物屋さんは? 忙しい時期ってあるの?」
「んー……お盆と年末くらいかな。普段は暇なくらいなんだけど、その頃は結構きつい」
そういう時期は姉が特に鬼に見える、と愚痴を漏らし、「売れるのはありがたいんだけど、姉のせいで必要以上の忙しさが僕にまわってくるんだよ」とさらに愚痴を続けた。
僕の愚痴に、愛ちゃんは「期待されてるんだよ」と笑う。
「それならいいんだけど、あそこまでくると嫌がらせだよ。姉のやつ、僕が高校入学した頃からすごい勢いで仕事任せてくんの。ばっかじゃないのって感じ」
彼女の優しさに乗じてたくさんの言葉を並べてしまった。しかし彼女は、「なんか楽しそうだね、大野家って」とさらに笑った。



