新たな1日を乗り切った夕方、私はこの日もすぐには帰路につかなかった。今日は文房具のコーナーを見ている。買うものを、ノートにするかメモ帳にするかで迷っているのだ。

「あれっ、愛ちゃんなにしてんの?」

後ろから女性の声が聞こえ、振り返ると迷彩柄のショルダーバッグを下げた藤原さんがいた。

「見ての通り文房具見てるんです。藤原さんこそ、帰ってなかったんですか?」

「いやあ、ちょっとね。あたしに合うナイスガイはいないかなあ、と思ってね」

「そんなに男性に飢えてるから見つからないんじゃないですか? 必死感なくせばすぐ見つかりますよ、藤原さんほど綺麗でかわいければ」

「最後の褒め言葉だけ受け入れるよ」と笑うと、藤原さんは「てか、男の人探してたなんて嘘だからね」と叫ぶように言った。

「ただトイレ行ってただけだからっ、変なこと信じるんじゃないよ?」

嘘だとしてもその感じが疑わせるんですよと笑った私を睨み、藤原さんは綺麗なショートヘアを掻き乱しながら店を出ていった。


その後しばらく悩んだ末、私は表紙にソフトクリームのキャラクターが描かれたノートを手にレジへ向かった。