「いやあ、たまには歩きもいいね。楽しかった」
「そうだね」
そこ座って、と綾美に指をさされ、テーブルを挟んで綾美と向かい合うように座った。綾美が窓の方、私がドアの方だ。
「ほんっとお腹空いたわ」
綾美はそう言いながら、買ってきたお菓子や飲み物を辺りに並べていった。なんとなくそれらを眺めていると、「愛はなに買ったの?」と声が飛んできた。
「あっ、えっと……」
自分の袋の中を覗いた。
「お菓子1つと、飲み物……あとパン1つ。かな」
「あれっ? おにぎり買わなかったの? 芹沢くんといたの、その辺りだよね?」
「ああ。おにぎりは忘れちゃって。それで……パン買っちゃって」
私が苦笑するも、綾美は笑ってくれなかった。
「いや、大丈夫。私の中ではこれくらいのこと、当たり前だから」
笑わずに見つめてくる綾美がなんとなく怖くて、なんとか笑ってもらおうと言い訳のようなものを付け加え、もう一度1人で笑った。
すると綾美は、まだ疑問が残っているような様子で頷き、「使って」とウェットティッシュをテーブルに置いた。
礼を言って1枚もらうと、綾美はやっと笑ってくれた。その笑顔を見て、心底安心した自分がいる。



