想い舞う頃〜最初で最後の恋〜


初めて入った芹沢家は、玄関には段差を低くするためか箱のようなものが、壁には手すりがあった。以前の様子は知らないものの、いずれも瞬の病気を理解するには十分なものだった。

リビングに向かう途中、瞬は手すりは親父がつけてくれたのだと笑った。そして続けるように、どれもこれも見ると嫌になると笑った。だけど私は、いいお父さんだなと思った。


芹沢家のリビングは、どことなく自分の家のリビングと似ているように感じた。家具の1つ1つに、我が家のものには感じない高級感のようなものを感じるけど、ものの配置が似ているからかもしれない。

高級感に似たなにかと同時に安心感も感じていると、瞬は1人掛けのソファに座り、ソファに杖を立てかけた。

「なんかもう、老人にでもなった気分」

困っちまうなと笑い掛けられ、私は首を振った。

「会えて嬉しいよ」

「なんか……ごめん」

「本当だよ。不在着信とんでもない件数でしょ」

私が口を尖らせると、瞬は「最低でも1日1件は」と頷きながら言った。

「ああ、適当に座って」

「うん。じゃあ、ここに」

私は瞬に一番近いソファの、彼に一番近い位置に座った。