瞬と会うことになったのは、5月中旬の、私が基本毎週休みである水曜日だった。

私が毎週水曜日が休みだと伝えると、奏は僕ん家も毎週水曜日を定休日にしようかなと冗談交じりに言った。そこから始まりかけた、奏の家が果物屋であるという説明には、瞬から聞いたの一言でストップをかけた。

私たちの通っていた高校の近くにあるコンビニで待ち合わせた奏は、下が膨らんだ白いビニール袋を持っていた。中には2つのりんごが入っているらしい。


コンビニから瞬の家に向かう間、奏は私を安心させるかのように、高校を卒業してからの瞬との楽しそうな出来事をたくさん話した。精神的には元気そうでよかったと安心した反面、私もその場にいたかったと思ってしまった。

高2の夏休み、思い出づくりと宿題の息抜きを兼ねて開催した、スイカ割り花火大会以来の瞬の家。私が綺麗な庭を見渡しているうちに、奏はさっさとチャイムを鳴らした。

つばを飲もうとしたが口の中が渇いていることに気づいて間もなく、中から鍵が開く音が聞こえた。奏がドアを引くと、初めて見る芹沢家の中と同時に、およそ2か月半ぶりの瞬の姿が現れた。

奏の言うとおり杖をついた彼は、一瞬複雑な表情を浮かべたあと、「久しぶり」と優しく笑った。瞬の笑顔が見られたことと声が聞けたことに安心し、頬が緩む。しかし「久しぶり」と返した私の声は、気持ちほど高ぶったものではなかった。