家に帰ってからは、ぼんやりとベッドに座って過ごした。それくらいの時間になるとお母さんに夕食だと呼ばれたけど、食欲がなかったので断った。

ずっと瞬のことを頭のどこかで考えたまま迎えた、新しい朝。髪を縛るのに鏡に映した自分の顔はかなり残念なものだった。だけどなにかを感じる余裕もなく、重たいものを胸に抱えたまま髪を縛った。瞬が褒めてくれたポニーテールだ。

深く考えずに選んだのは白いTシャツだったので、何色でも合うだろうと思い目についた薄い素材の黄緑色のリボンをポニーテールに結んだ。


職場に着くと、今日も藤原さんが声を掛けてきた。

「どうした、元気なくないかい?」

「そんなことないですよ」

昨日夜ふかししただけですと返すと、私はロッカーの中にバッグを入れ、同時にエプロンを取り出した。

「ねえ、愛ちゃん何座?」

「えっ……ああ、射手座ですけど」

それがどうかしたんですかと尋ねる前に、藤原さんは「まじかあ」とのけぞった。

「射手座、今日の占い最下位だったよ。あたしがいつも観てる朝の情報番組の占いなんだけどさ、あれの結果だけは結構信じちゃってるんだよねえ、あたし」

ラッキーパーソンは親しい先輩だってさ、と言うと、藤原さんはエプロンを着け始めた。彼女は素早く首元と腰辺りの紐を結ぶと、「あたしがもし愛ちゃんにとって親しい先輩ならなんでも相談して」と私の肩をぽんと叩き、あくびをしてから「行こっか」と笑顔で言った。